Bartholomeus van der Helst,Mary Stuart Princess of Orange as Widow of William II(part),
Rijksmuseum
Ciao!
冒頭の絵は何でしょう?そう。みかんだね。ということで、今日のテーマは未完のまま終わってしまった絵画作品だよ。
さて、未完のまま連載を打ち切ってしまう漫画は、日本のシビアな漫画界ではよく目にする光景だけど、
車田正美先生, 男坂 最終話より |
1. ティツィアーノ アクタイオンの死
Titian, The Death of Actaeon, National Gallery London |
ほら、弓に弦が張られてないでしょ?
ティツィアーノさんはこの絵で、物語の一場面をきっちりと描くことよりも、動きのある描写、造形と色彩の調和を意識してたんだと思う。でもそういう描き方は、ルネサンス期には一般的ではなかったから、かなり試行錯誤を重ねていたんじゃないかな?
その結果、この絵は10年以上も描いては消し、消しては描いての永遠のループにはまってしまったんだ。そして、結局最後まで彼が満足いくレベルに仕上がることなく、彼が亡くなった時もアトリエに残ったままになっていたんだって。
ダヴィンチさんのモナリザもそうだけど、新しい表現を自分の納得いくレベルで仕上げるというのは、技術もあって審美眼も冴えている巨匠になればなるほど難しいのかもしれないね。
2.パルミジャニーノ 首の長い聖母
さて、次はパルミジャニーノさんの「首の長い聖母」。よく似た名前のチーズでパルミジャーノっていうのがあるけど、パルミジャニーノさんの名前にはニが入るから注意してね!
Parmigianino, Madonna and Child with Angels, known as the "Madonna with the Long Neck", Uffizi |
円柱のそばに立つ男性も縦のラインの構図に組み込まれているんだけど、その足元をよく見てみて。
何が見えるかな? |
別の人の脚が描きかけのままだね。さらに男性の後ろの円柱の側面も、よく見たら仕上がっていないよね。
こんな感じで、明らかに未完のままの作品なんだけど、この絵はティツィアーノさんの作品とは違って売りに出されたんだ。その後なんやかんやあってナポレオンの手に渡り、最終的にはまたイタリアに戻ってきたという、歴史に翻弄された絵なんだよ。
マニエリスムについては、がっつり語りたいんだけど、今回はあくまで未完作品の回だから、また別の機会にね。では、次行ってみよう!
3.ヴェロッキオ工房 トビアスと天使
Workshop of Andrea del Verrocchio, Tobias and the angel, National Gallery London |
絵の内容は、トビアスという少年が、目の悪いお父さんの代わりに旅に出るんだけど、お父さんが息子の旅の安全を神様に祈ると、天から天使ラファエロが見守り役として遣わされ、さらにはお父さんの目を治す薬(ぶら下げている魚の肝)まで手に入れて、無事に家に帰れました、めでたしめでたしというお話なんだ。
この絵は一般的には未完作とはされてないんだけど、僕的には一か所だけ気に入らない点がある。それがこの犬!
トビアス君の旅のお供をするわんこ |
高名なヴェロッキオさんの作品とは言え、あくまで「工房作」だから、中には技術的に未熟な弟子もいたでしょうよ。でもね、このクルクルでフワゆるなカーリーヘアの描き方は、明らかに当時この工房で修行中だったダヴィンチさんの手によるものなの!
同じころのダヴィンチさんのフワゆるカーリーヘア
Workshop of Andrea del Verrocchio, The Baptism of Christ, Uffizi
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だから、あえて声を大にして言わせてもらうよ。「ダヴィンチさん!この犬、下地が透けてる!やり直し!」
叫んですっきりしたところで、次行ってみよう!
4.トマス・ゲインズバラ アンドルーズ夫妻
Thomas Gainsborough, Mr and Mrs Andrews, National Gallery London |
これは18世紀半ばの結婚肖像画で、奥の農地は結婚によって二人が持つことになった広大な土地なんだ。その面積は3000エーカーとも言われていて、なんと東京ドーム260個分。僕、まだ東京ドームに行ったことないんだけども。
さて、この絵の未完成部分は奥さんの膝の上。
旦那さんが銃を持っていることから、膝の上には仕留めた獲物であるキジ(畑を荒らす害獣)を描く予定だったとか、子供が生まれたら描くつもりだったとか、いろんな説がささやかれているよ。
当時は、子どもたちが両親を囲む形で描かれた家族の肖像画っていうのが結構一般的だったんだ。もちろん、お金持ちの間でだけね。
David Allan, The Hunter Blair Family, National Gallery Scotland |
上の絵もそう。僕的には左端の難しい年ごろの男の子がなんか好きだな。こんな時、リヴァイ兵長だったら・・・
諌山創先生, 進撃の巨人 22巻より |
っていうよね。きっと。さて、僕の進撃好きは置いておくとして・・・最初の夫婦は9人の子供に恵まれているんだ。この不機嫌そうな顔からは想像もつかないけど、やることはやってたみたい。
2人してツンデレだったのかもしれない |
にもかかわらず、膝の上の空白は一向に埋められることなく、残されたまま今に至る。この夫婦が何を思っていたのかは永遠に謎のままさ。
さてと、今回のお話はここまで。美術館でじっくりと絵を鑑賞する機会があったら、絵の端々までしっかりと見てみて。みんなの周りにも、未完成の絵が意外とあるかも。
ちなみに、僕が今一番気になっている未完作はハンタ―ハンター。休載のまま終わってしまうのか、はたまた冨樫先生が奇跡の復活を果たすのか。末永く見守っていこうと思うよ。
それじゃあまたね。Ciao!
武井宏之先生, シャーマンキング最終話より(部分)
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