みんなは西洋画の主題について考えたことはあるかな?古い時代のものになればなるほど、元ネタも古くなるし、社会や文化も今とは違っているから、何が描かれているのかわかりにくい物が多いよね。
このカテゴリーでは、わかりにくいテーマの筆頭として挙げられる(かもしれない)ギリシャ神話の神々について、掘り下げていくよ。
Sandro Botticelli,The birth of Venus, Uffizi |
古代ローマ土着の信仰とギリシャの神々
ヨーロッパの神話といえば、一番に思いつくのがギリシャ神話じゃないかな?でも、それとは別に古代ローマにも土着の信仰があったんだ。
例えば、ローマ建国のお話とかね。
ローマの神話でローマを建国したとされる狼に育てられたロームルス。 |
ただ、今では「ヴィーナスはギリシャ神話のアフロディーテ」のように二つの神話は同一視されていて、切っても切れない間柄になっているんだよ。
どうしてこんなことになったかというと、紀元前6世紀ぐらいに、ローマ神話とギリシャ神話の統合が進められたからなんだ。このあたりから二つの神話がぐっと近づいたんだ。
どうしてローマの神は異端じゃないの?
八百万の神様がいる日本ではわかりにくい感覚かもしれないけど、キリスト教社会では神様はたった一人だけ。もちろん、キリスト信仰や聖母信仰、守護聖人の思想もあるけど、神様というのはあくまで「天にまします我らが父」だけなんだ。だから、他の神様は異端であり、邪悪であり、神を名乗る悪魔とすらされることもあるんだよ。
そんな背景があるから、本来であればギリシャの神々はキリスト教社会には受け入れがたい物なんだけど、ルネサンス期以降の西洋絵画ではこの主題が頻繁に取り上げられているよ。
まぁ、あの時代に古代の神々を実際に信じている人は居なかったから、特に問題とされなかったってことだろうね。さらに言うと、ギリシャ神話はキリスト教に関連した宗教画と並んで「歴史画」と言われる一番高位なジャンルとして扱われたんだよ。
Piero di Cosimo, Andromeda freed by Perseus, Uffizi ギリシャ神話のシーンの一つ。ペルセウスがお姫様を救う英雄譚の王道。 |
神話の神が人気な訳
僕たちの時代、絵は個人的な趣味のものではなく、教会に納める宗教画と権力者に治める肖像画が中心だったんだ。そういうオフィシャルな発注は、どうしても絵が堅くなるんだよね。
そんな中でちょっと違うテイストで描けたのが古代の神々の絵なんだ。ギリシャの神々は人間のように怒って、笑って、恋愛もする。不倫とか浮気とかスキャンダラスな部分も持っているからね。
さらに、一応神様の絵を描いているわけだから、ちょっとくらいの問題のある主題でも色々と言い訳もたつしね。たとえば、裸婦を「女神です」っていうのは常套手段だったんだよ。当時は女性の裸を描くだけで「なんて破廉恥な」って批判された時代だったからね。
Tiaian, Venus of Urbino, Uffizi |
ちなみにウルビーノは僕の故郷!僕のベッドにもこんなにかわいいヴィーナスが舞い降りてくれたらなぁ。
そうそう、ヴィーナスといえば、今の日本でも西洋の神話の代表格として有名でしょ?それは、当時のイタリアでも同じで、ギリシャ神話の成立は一番有名な吟遊詩人ホメロスの生きた紀元前8世紀ごろとされてるんだけど、ルネサンス期からさかのぼること2000年以上も前の話なんだ。
にもかかわらず、ラテン語に翻訳された本が依頼主となる貴族階級に読まれていたから、みんなは一通りはどんなお話があるのかは知っていたんだ。これも、神話画が人気になった理由の一つじゃないかな?みんなが元ネタを知っているというのも主題を選ぶうえで大切な要素だからね。
それじゃあ、次回から何回かに分けて、ギリシャ神話の主題をテーマごとに見ていくよ。
今回はここまで。Ciao!
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参考文献
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