2017/07/20

ヴァチカン美術館【中編】

いつも大混雑なヴァチカン美術館

Ciao!

ヴァチカン美術館は、いつも人でごった返していると言われているけど、実はすいている時間が少しだけあるんだよ。

それが、閉館間際。美術館の入場時間は午後4時までだから、それ以降は新規のお客さんが入ってこなくて、人の波が一気に引くんだ。

もちろん広大な美術館だから、閉館間際の入館はおすすめしないよ。おすすめするのは閉館間際からの2周目さ!

美術館は6時までオープン。実際にはぎりぎりまで居座ることはできないけど、この時間帯(4時から5時半くらい)を利用すれば、いつも混んでいるピオ・クレモンティノ美術館やタペストリーのギャラリー(上の写真)などなどもゆっくりと見ることができるよ。

そして最後に、ラファエロの間とシスティーナ礼拝堂に再突入!チケット代のもとをきっちり取って帰ってねw。


さて、今回はラファエロの間を紹介するよ!

ラファエロの間とは、その名の通り僕が手掛けた一続きのエリアのことさ。

このへん。

どこを見ても僕の絵

エリアには4部屋あって、その中でも特に有名なのは順路3部屋目の署名の間と呼ばれる部屋。アテナイの学堂もここに有るよ。

アテナイの学堂 by僕


この絵にはダヴィンチさんや、

プラトンに扮したダヴィンチさん

三毛さん、
ヘラクレイトスに扮した三毛さん


ブラマンテさんと僕、

アルキメデス風のブラマンテさんと
アペレス コスの僕

と、僕の身近な人たちがカメオ出演!

この部屋は、ユリウスさんの書斎になるって聞いてたから、知的なインスピレーションがわくように古代ギリシャの哲学者や科学者たちをモチーフにしたんだよ。

ユリウス2世の肖像 by僕

ユリウスさんからは、キリスト教の正当性をたたえる感じで描いてって言われてたから、古代史とキリスト教の融合を意識して、学堂の建物はサン・ピエトロ大聖堂から拝借。結構、気を遣ってるでしょ?

サン・ピエトロ大聖堂内部

そうそう、三毛さんのお友達(だいぶ年下だけどね)のヴァザーリさんが書いた「芸術家列伝」の僕の章では、下の写真のディオゲネスを褒めてくれてたんだ。

アテナイの学堂、ディオゲネス
この小汚いおじさんを「美しい」って
言ってくれたの。

この人は哲学者の中でもかなり変わった人で、着る物にも住む場所にも無頓着で、ボロボロの格好で樽の中に住んでいたと言われているんだ。

それでも頭の良さは有名だったから、アレクサンダー大王がわざわざ挨拶に来て「何か望むことはないか?」と直々にオファーを出した際には、臆することなく

空知英秋先生 銀魂より
「焼きソバパン買ってこいよ。あとジャンプもな 勿論お前の金で」

と言ったという逸話が残っているよ。

え?違ったっけ?あ!

「今、日向ぼっこしてるんで、そこに立たれたら陰になるんで、どいてください」っていったんだったね。うん、そうだった。ただ、銀魂ネタをやりたかっただけだから。うん。

まあ、そんなキャラの立ってる哲学者だからね、真ん中にどどーんと描いといたよ。小汚いけどね。

その他に見てほしいのは、同じ部屋の左側の壁にある絵。

パルナッソスの山 by僕

こっちはね、古来からの文壇の人たちが文学と音楽の神様アポロンの所に集まった場面を描いてみたの。

三毛さんが大好きだったダンテも、ヴァザーリさんが大好きだったであろうホメロスもいるよ。

赤い服が「新曲」のダンテさん
青い服が「イリアス」「オデュッセイア」のホメロスさん

僕、ヴァザーリさんのことあんまりよく知らないんだけど、ホメロスの文章と、ヴァザーリさんの文章を読むと、似ている部分が多いんだよね。やたらと褒め称えるところとか、「神のごとき」ってフレーズが多いところとか。だから、ヴァザーリさんは絶対にホメロス作品を読み込んでたと思うんだ。

もちろん彼らはみんな歴史上の人物だから、僕はあったことがないよ。だから、先の人が描いた肖像画とかを参考にしたんだけど、一人だけ、顔のイメージとか服の趣味とかがわからないくて、描きにくかった人が居たの。

それが、このサッフォーさん。
名前を書いた紙を持つサッフォー
だから、名前を書いた紙を持たせてみたよ。

うん。短期間に何人も描いてたらこうなるよね。これは、不可抗力だ。

そうそう、失敗談的な話なら実はまだあって、順路二部屋目のこの絵もそう。

レオ1世とアッティラの遭遇

左に出てくる下の写真の二人組。双子みたいに顔が似てるけど、実は双子じゃなくて同一人物っていうオチw

大きな鼻と緩んだあごがトレードマークの「ある人物」

さっきも言ったと思うけど、この絵はもともとはユリウスさんのために描いてたから、最初は教皇レオ1世の顔をユリウスさんの顔で描くつもりだったのね。

でも、製作途中でユリウスさんが亡くなって、教皇が変わっちゃったの。名前もレオ10世で、微妙にテーマと関連があるし、これはもう当初案は捨てて、新教皇の顔で描こうと思ったわけさ。教皇の顔の部分はまだ下絵の段階だったしね。

レオ10世と枢機卿たち by僕 Uffizi
中央が教皇レオ10世

でもよく考えたら、この人のことすでに別の人物として絵の中に一回登場させちゃってたんだよねwそれで、ひとつの絵に同じ人が2回登場するっていう、不思議な絵が出来上がったの。

フレスコ画って乾くと直せないから、これも不可抗力だよね!うん、しかたない。

こんなんばっかり紹介して、「なんだラファエロってアホだったんだ」って思われたくないから、いいところもちゃんと紹介しないとね。

例えば、この絵。

ボルゴの火災 by僕(製作は弟子)

この絵は、実際に描いたのは弟子たちだけど、僕が下絵を描いた作品。ほら、この親子、どこかで見おぼえない?

年老いた父を背負う息子

そう、ベルニーニ☆ラリーで出てきたアイネアスたちだよ。

ベルニーニさん作 アイネアスとアンキセス


実は、ベルニーニさんの作品は僕の絵からインスピレーションを得たとも言われているんだよ。僕の作品があの傑作のひらめきの源泉になるなんて、僕のことちょっとは見直してくれたかな?

それから同じ部屋の天井画にも注目してほしいな。

タッチの違う天井画は、師匠のモノ

これは僕のお師匠ペルジーノ先生が描いた部分なんだ。他の部屋も、もともと描いてあった絵を崩して新たに書き直したんだけど、師匠の絵だけは崩せず、取っておいたんだ。お世話になった人だし、それを崩して描きかえるなんてできなくて。

こんな感じで、思い出のいっぱい詰まったラファエロの間。混んでることが多いけど、少し立ち止まってゆっくりと見てもらえたら嬉しいな。

それでは、今回はここまで。Ciao!


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