物言いその2
わしら、ルネサンスの画家が、今でも知られているのは、一つにジョルジョ・ヴァザーリの書いた「芸術家列伝」という本に理由がある。
わしら、ルネサンスの画家が、今でも知られているのは、一つにジョルジョ・ヴァザーリの書いた「芸術家列伝」という本に理由がある。
こやつはわしの弟分でもあり、本当にいいやつじゃった。ただ、いいやつすぎて、あのラファエロまでもをほめたたえておるんじゃ!信じられん!
じゃがわしは、見つけたぞ!ジョルジョの書いたこの本に、ラファエロの本質をとらえた一文を!
(ラファエロの持つ)その美徳の数々には、優雅、勤勉、美、謙遜、そしてあらゆる悪徳、あらゆる汚点を細大もらさず蔽ってしまうほどの良き品性が付随していた。
ジョルジョ・ヴァザーリ/芸術家列伝2/白水Uブックス
そう、ラファエロは、悪徳も汚点も併せ持った本当に嫌な男じゃったんじゃ。ただ、たぐい稀なるコミュニケーション能力の高さで、周りのやつらはまるであやつが実力と謙虚さを持ち合わせた素晴らしい人間だと、コロっと騙されておったんじゃ。
やつが本当に実力と謙虚さを持ち合わす人徳ある人間であれば、こんな自画像を描きはしまい。
これは、あやつの代表作の一つ「アテナイの学堂」の片隅に描かれたあやつの自画像じゃ。ちなみに、中央の目立つところには、ダヴィンチのおっさんと、わしが描かれておる。
この際、わしが陰気な哲学者として描かれていることはスルーしよう。いや、この怒りはいつか別の場面でぶちまけることになるとは思うが、今はぐっとこらえよう。
この絵を見て人は、ダヴィンチをプラントンに、ミケランジェロをヘラクレイトスに描き、自分は画面の端にアペレスとかいう作品も残っていないような画家として描いたラファエロはなんて謙虚なんだ・・・などとぬかしおる!
しか~し!!アペレスは、芸術家仲間の間では神とあがめる者もあるほどの伝説の画家なんじゃぞ!
古代ギリシャの画家アペレスは、作品こそ残ってはおらんが、その絵の話は語り継がれておったんじゃ。そんな伝え聞いた情報だけで、アペレスの絵を再現しようと試みた作品がこれじゃ。
Botticelli, The Birth of Venus, Uffizi |
このルネサンスを代表する絵の元ネタを描いたのがアペレス。ルネサンス画家であれば知らんものはおらん伝説の画家じゃった。
絵の知名度は劣るが、前にこのブログで紹介されとったこの2作品もアペレスの作品を再現しようとしたものじゃ。
Botticelli, The calumny of Apelles, Uffizi |
Maerten de Vos, The calumny of Apelles, Rubens House |
アペレスの絵「誹謗」は、古代ギリシャの詩人ルキアノスによってこう述べられている。
そこにはとても長い耳を持った一人の男がおり、その傍らには2人の女性<無知>と<猜疑>が立っている。別の側から<誹謗>が進んでくる。美しい女性の外見をしているが、その顔は狡猾さに慣れていることを表し、左手にたいまつを握り、もう一方の手で、両手を天に伸ばす若者の神を引きずっている。三浦篤、まなざしのレッスン① より
この文章を読んで、アペレスにあこがれる後世の画家たちはせっせと絵を制作したんじゃ。アペレス先生の描いた絵はどんなものだったのだろうかと、期待に胸を膨らませながらな。
ラファエロは、自分がそういう影響力を持った画家だと、この自画像で語っておるのじゃぞ?こんな男を、おぬしは本当に謙虚なやつだと思うかね?
あやつのコミュニケーション能力の高さは、あやつの育った環境に起因しておるのではないかとわしは思う。あやつのオヤジはウルビーノの宮廷画家で、あやつ自身も幼いころから宮廷に出入りしておったようなのじゃ。
ウルビーノの宮廷。小国ながら芸術に熱心な領主がいた |
ああいうところは、手練手管に長けたやつらが、舌先三寸で立ち回っておるところじゃからな。あやつはいわば舌先三寸の使い方の英才教育を受けてきたんじゃ。
それゆえに、あやつが腹の中で何を考えておったのかは誰にもわからん。まあ、あんなやつのことだ。きっと、腹の中はどどめ色だったに違いない。
つまりあやつの性格を一句にまとめるとこうなる。
コミュ力が なければただの 嫌なヤツ!
まだ続くぞい!
つまりあやつの性格を一句にまとめるとこうなる。
コミュ力が なければただの 嫌なヤツ!
まだ続くぞい!
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