2017/06/02

筋肉絵画の急先鋒、ミケランジェロさん

ミケランジェロ、トンド・ドーニ(部分)


Ciao!こんにちは。

前回に引き続き、今回もミケランジェロさんについて語っていくよ。今回のテーマはズバリ、「ミケランジェロさんと筋肉」。

筋肉を描かせたら右に出る者はいないミケランジェロさんにぴったりの内容だね。

ミケランジェロさんの筋肉好きは、洋の東西を問わず知れ渡ってるとは思うけど、あえて原点に立ち戻って、彼がどれくらい筋肉狂かを検証していくね。

まず見てほしいのは、マザッチョさんが1427年ごろに描いた「楽園追放」という絵なんだけど・・・

マザッチョ、楽園追放
Masaccio,
The Expulsion Of Adam and Eve from Eden
Santa Maria del Carmine

当時は、人体の表現の正確さや大胆な表情の描写が話題になって、たくさんの画家がこの絵を見に行って模写したんだ。

大胆な表情の描写ってなんだ?って思った人!当時の一般的な絵は下のような感じだったんだ。堅いでしょ?

マソリーノ、聖アンナと聖母子
Masolino
Madonna and Child, Saint Anne and the Angels
Uffizi
マザッチョさんの師匠の絵だよ

これに比べると、マザッチョさんの絵には人間味があるし、人体の描写も正確だよね。だから、その後数十年に渡って若手画家たちのお手本的存在であり続けたんだ。ミケランジェロさんも13歳の頃に模写に行ったんだよ。

その時に描いた絵がこちら。

ミケランジェロ、13歳のデッサン
Michelangelo, 楽園追放のデッサン
1488年頃

13歳なのにこんなに絵が上手だったの!?って思った人、見るポイントはそこじゃないからね!!腕と脇腹のところよく見て!わかりやすくするために比べてみると・・・

マザッチョ、ミケランジェロ 筋肉比較
左:マザッチョ  右:ミケランジェロ

完全にライザップのBefore/Afterみたいになってるよね。僕が美術の先生だったら、これは模写とは言わせないよ!これは、マザッチョ絵画にインスパイアされた、マザッチョマッチョだよ!

ちなみに、インスパイアとパクリは違うからね!

ダヴィンチをパクったラファエロ
インスパイアの例

そうそう、後にミケランジェロさんが書いた詩があるんだけど・・・

愛よ、どうか教えておくれ
私の目は本当にあこがれの美を見ているのだろうか
それとも私の中に美があって、どこを見ても
彼女の顔が彫られているような気がするだけなのか・・・
Dimmi di grazia, Amor, se gli occhi miei
veggono 'l ver della belta c'asprito
o s'io l'ho dentro allor che, dov'i miro
veggio scolpito el viso di costei...

ミケランジェロさん、あなたの目には理想的な美なんて見えてないよ!むしろ、あなたの脳内には常に筋肉があって、どこを見ても筋肉が見えてるレベルです。可及的速やかに強めのお薬を出してもらてください!

と、まあこんな感じで、13歳にして末恐ろしい筋肉狂だったから、その影響は彼の芸術家人生の中でも根幹の部分となっていくんだ。

ダヴィデも

ミケランジェロ、ダヴィデ

トンド・ドーニも

ミケランジェロ、トンド・ドーニ

夜も

ミケランジェロ、夜

筋肉バカの一つ覚えみたいにマッチョに仕上げていくミケランジェロさん。

フィレンツェで、ダヴィンチさんと同じ部屋に壁面画を描くという夢の競作プロジェクトでも筋肉愛は留まるところを知らず、絵のテーマは「フィレンツェの栄光の戦い」だったのに、裸と筋肉を描きまくってしまったミケランジェロさん・・・。

バスティアーノ・ダ・サンガッロ、カッシーナの戦い模写
Bastiano da Sangallo, The Battle of Cascina(copy)
戦いよりも裸体を重視した感じが否めない

まぁ、ミケランジェライズされた裸体が並ぶカッシナの戦いは、人体把握の的確さからデッサンのお手本としては重宝されて、かつてのマザッチョさんの絵のように若い画家が模写しに来たとか。

そう考えると因果なものだけど、本人はそんなこと全く考えてなくって、たぶん、おそらく、九分九厘、筋肉が描きたかっただけだろうね。

さて、残念ながらこのプロジェクトは、2人ともが仕事を放棄しちゃって実現することはなかったんだ。芸術家の仕事放棄は親の顔より見る光景だからね。

まあ、もし完成してたらヴェッキオ宮の大評議会室の壁一面が裸と筋肉で覆いつくされてただろうから、これはこれでよかったのかも。うん、そういうことにしておこう。

実際に、最後の審判はすごいことになってるしね。
ミケランジェロ、最後の審判
Michelangelo, Last Judgement, Sistine
教会内が筋肉で覆いつくされる事態に!
しかも最初はみんな全裸でした

とにかくミケランジェロさんの筋肉礼賛は果てがないんだ。そのことがよくわかる作品が1534年ごろに作られ、「優美」な印象をねらったこの像。

ミケランジェロ、勝利
Michelangelo, Victory, Palazzo Vecchio

今ではマニエリスムと呼ばれる一時代を作った技法で、優雅に見えるように体を引き伸ばされてるんだけど、いかんせん脇腹が猛々しすぎて、優雅・・・かなぁ?完全に優雅さが猛々しさの影に隠れちゃってると思うんだけど。

優雅さと猛々しさの統合って、結局のところ「細いデブ」とか「赤貧のセレブ」みたいに、自己矛盾をはらんでいるわけでしょ?だから、この作品は、変に優雅さなんて狙わずに、ガチマッチョ路線で行った方がよかったんじゃ・・・っていうのが僕の感想。これはこれで唯一無二の味がある像とは思うけど。

さてと、今回はここまで。芸術家って、多かれ少なかれ頑固なところがあるんだけど、ミケランジェロさんの筋肉愛はそんなレベルじゃなかったっていうのをわかってもあえたかな?もう狂気の域だよね。

次回はそんなロックなミケランジェロさんの生涯をにプライベート含めて迫っていくよ。

ではまたね~。Ciao!

【参考文献】
ミケランジェロ日本語版、ブルーノ・コンタルディ/ジューリオ・C・アルガン、Giunti


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