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Ciao!
ギリシャ神話シリーズ第二弾は、ギリシア神話の最高神ゼウスについてだよ。
ゼウスというのはギリシャ語での名前で、ローマでの名前をユーピテル(Juppiter)、英語名はジュピター(Jupiter)。僕たちはローマ名のユーピテルの方を使っていたけど、日本ではビックリマンの影響か、ゼウスの名前が一番知られてると思うから、その名前で呼ぶことにするね。
ゼウスは木星を司る神様であり、雷も操れる、ギリシャ神界最強の神様なんだ。彼は代々、神界の最高神を務める家柄に生まれたサラブレットなんだけど、彼が最高神になるまでにはまあ、色々とあったのさ。
というのも、ゼウスの父親であるサトゥルヌスが生まれてきた子供をどんどん飲み込んでしまう、とんでもない父親だったんだ。
なぜこんなことになってしまったのか。その原因は、サトゥルヌスとウラヌス(ゼウスから見たおじいちゃん)の大喧嘩にまでさかのぼる。
ウラヌスとサトゥルヌスは神界の最高神の座を巡って全面戦争をするんだけど、負けたウラヌスは去り際に、「こんなことしてたら、いつかお前もおんなじ目に遭うぞ!」って言葉をサトゥルヌスに残したんだ。
その言葉が妙にサトゥルヌスの心に引っかかって離れない。いつか自分も子供に追い落とされるんじゃないかと恐れた彼は、自分の子供が生まれるたびにその子を飲み込むようになってしまった。
その状況を描いたスペインの19世紀の画家ゴヤの絵(↓)は、見たことある人も多いんじゃないかな?
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Goya, Saturn Devouring His Son, Prado |
これは17世紀のフランドル画家ルーベンスの絵(フランダースの犬で主人公ネロが見たがっていたのもこの人の絵)に着想を得たと言われているよ。
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Peter Paul Rubens, Saturn Devouring His Son,Prado |
ちなみにサトゥルヌスの上にある三つの星は、土星とその輪なんだけど、この絵が描かれた1600年代前半の望遠鏡の精度では、土星の輪をはっきりと見ることができなかったので、左右にひとつづつ小さい星があると思われていたんだ。
あ、なんで土星が急に出てきたかというと、サトゥルヌスの英語名はサターン。つまり土星をつかさどる神ってわけさ。
そうそう、サトゥルヌスのギリシャ名を言うのを忘れていたね。ギリシャ神話の農耕の神クロノス(Κρόνος)や時の神クロノス(Χρόνος)と同一視されてるんだ。二つともカタカナで書くと全く同じ表記になってしまうし、ラテン語でも区別がつきにくいから、全然違う神様が混同されちゃってる訳なんだけど、まあ、その辺のことは気にしなくてOKだよ。
そういうわけで、サトゥルヌスはゼウスの父としてだけでなく、時や収穫の擬人化した姿として描かれることもあるだ。
さて、そんな困った夫サトゥルヌスを持つ妻レアは、さすがに6人目の子供ゼウスが生まれた時には子供の代わりに石を産着に包んで夫に渡し、子供は安全な場所に隠して育てることにしたんだ。伝説では、アマルティアという女性と、半人半獣のサテュロスによって育てられたことになってるよ。
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Nicolaes Pietersz Berchem, The Infancy of Zeus, Mauritshuis |
そうして、密かに育てられたゼウスは、父の体内で生きていた兄たちを開放し、母や巨人族を味方につけて父を打ち倒し、自分が最高神の座に収まる。結局のところ、こうして祖父ウラヌスの予言は当たってしまったんだね。
悪い予言の予防策としてとった行動が、結果として予言の実現を助けてしまうというのは、ギリシャ神話ではよくあることで、一度立ってしまったフラグを取り消せないのがギリシャ神話なのさ。
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Unknown, Jupiter of Smyrna, Louvre |
どう?ビックリマンのゼウスにちゃんと似てるかな?上の像は若めに作られてるけど、一般的にはもうちょっとおじさんのイメージで表現されることが多いよ。
彼は、ユノー(ギリシャ名:ヘラ)という奥さんもできて、ウルカヌスという子供(前回話したヴィーナスの旦那さんだね)も生まれたんだけど、この二人もなかなか濃いキャラなんだ。
まずユノーはものすごいやきもち焼きな女神なんだ。とにかく夫への束縛と監視がすごくて、ゼウスがどこで女の子といちゃついてても、目ざとくそれを見つけて懲らしめに来るという奥さんだった。
ただ、浮気をした張本人であるゼウスには比較的甘くて、文句を言ったりすることはあるけど、実力行使で懲らしめられるのはいつも女性の方。しかも、この女性(主に年端も行かない乙女たちなんだけど)は、ゼウスから無理に関係を迫られた被害者なのに、そういう女の子たちに対しても、容赦なく制裁を加える。
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Pieter Lastman, Juno discovering Jupiter and Io,
National Gallery London |
上の絵では、画面左上でクジャク(ユノーを象徴する鳥)と一緒にいるのがユノー、右下がゼウス。これは、浮気を隠そうとしたゼウスが浮気相手のイオをとっさに牡牛(ユノーが好きな動物)に変えて言い逃れをしようとするシーンさ。
もちろんゼウスの言い訳が通じるはずもなく、イオは牛の姿のままユノーに連れていかれ、目が100もある怪物のもとで厳重に監視されて暮らすことになってしまうんだ。
一方で、ゼウスのユノーへの扱いも結構ひどくて、人間との間に生まれた息子ヘラクレスを不死にするため、寝ているユノーの母乳をヘラクレスに飲ませたりっていう話もあるよ。
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Tintoretto, The Origin of the Milky Way,
National Gallery London |
愛人の子を本妻の乳で育てるって、そうとうな大胆なゲスだよね。まあ、これが天の川(ミルキーウェイ)の起こりなんだとか。あ、ここでもワシとクジャクが描かれているのに気付いたかな?
2人の子どもウルカヌスは、ヴィーナスの回にも出てきたよね。
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Tintoretto, Venus Mars and Valcan, Alte Pinakothek 妻の浮気現場を押さえたウルカヌス |
ウルカヌスは、最高神の直系の一人息子のわりに、ぱっとしない神様なんだけど、宴会ではみんなにお酒を注いで回ったり、冗談を言ったりと、三枚目キャラとして定着しているよ。
でもそれは、仮の姿で実はかなりの策士なんだ。ヴィーナスとの結婚にこぎつけたのもそうだし、ある日なんかヴィーナスの浮気現場を押さえるべく、自慢の鍛冶の腕前を生かして、目には見えない青銅製の網で罠を作ったんだ。
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Joachim Wtewael, Mars and Venus Surprised by the Gods, Getty center |
その網で浮気現場を一網打尽にされたのが上の絵さ。右下で、マルスの鎧の上に載っているのがウルカヌス。どういう状況なのかわからないけど、この絵では、ベッドの中の異空間に、ウルカヌスが自分の鍛冶場で一生懸命に罠の網を作る光景が移されているね。涙ぐましいよ、この人の努力は。
さらに、上の方には雷を手にしたゼウスがワシと一緒に様子を見に来ているね。息子の嫁の浮気現場を見に来るっていう野次馬根性!さすが最高神!
その横で大鎌を持っているおじいさんは、さっき説明した時の神クロノスから着想を得た時を擬人化した姿だよ。愛は時によって終わらされる(時間がたつと段々と情熱が冷めていくでしょ?)とされていたからね。
この場面でウルカヌスは妻の浮気を白昼の下にさらすことができてしてやったりと思っていたんだけど、それを見に来たヘルメスとアポロンは「こんなかわいいヴィーナスと一緒に寝れるなら、公衆の面前で網の中でさらし者にされても全然いいわ~」「それな!」とのんきな話をしていたの。ウルカヌスの立場ないよね・・・。
こんな感じでゼウスの家族たちはみんな一癖もふた癖もあるんだけど、それでもオリンポス山で仲良く暮らしてたのさ。
今回はこのへんで。
それでは、またね!Ciao!
おまけ
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アントワープ郊外にあるフランダースの犬像。 『アントワープの観光スポットで310軒中253位です』 トリップアドバイザー調べ |
ネロが死ぬ前に一目見たいと願っていた絵は、今では数ユーロの入場料を払えば他のたくさんの絵とともに簡単に見ることができるよ。
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Rubens, Descent from the Cross、 Cathedral of our Lady, Antwerp 南無ネロ |